レポート:立体表示ディスプレイ(OUCHI Laboratory)

コロナの影響でリアル会場での展示は2年ぶりとなったMaker Faire Tokyo。会場は以前より少しコンパクトになり,出展ブースの間隔も広くなっていた。なんだか少し寂しい気持ちになったが,イベントが始まると疎だった空間は来場者で埋まり,以前と同様の賑わいを見ることができて,とても嬉しい気持ちになりました。いやー,MFTって本当にいいもんですね。

今回は久々のMaker Faire Tokyoで目に留まった,立体表示ディスプレイについて紹介します。
これは2Dのディスプレイを高速に上下運動をさせた際の残像を使って,3Dを表現するディスプレイです。

立体表示ディスプレイ

これは体積走査型と呼ばれる3次元を表現できるディスプレイです。2次元のディスプレイを1軸方向に動かすと2次元+1次元で3次元が表現できるという代物です。SF作品に出てきそうなアレを目標に少しずつバージョンアップを重ねてきました。最近はVRにも手を出してみたので3Dプリンターで作れるVRゴーグルの光学系も展示します。

https://makezine.jp/event/makers-mft2022/m0045/

ちょっと写真だと残像ができず3Dに見えないので,YouTubeで動きを見てもらえると分かりやすい。
https://www.youtube.com/user/dennou4423

立体表示中はモーターの駆動音がウォンウォンと鳴り響きます。
中身が一体どうなっているか開いて見せてもらいました。奥の前回モデルから折り返しの残像のブレを軽減するためにバネが追加され,ステッピングモーターのヒートシンクもなくなっていた。外側からでは分かりにくいが,3Dっぽく見える表示を実現するために細かな改良が施されていた。
また一世代前のモデルは装置で,現在のモデルはインテリアのような印象を受けた。すごいデザインがグレードアップされているように感じると伝えると,新しいモデルにする前にプロダクトデザインの本を読んで勉強したとのこと。インプットされたことがすぐにアウトプットできていて素晴らしいことだと感じた。一世代前のモデルから今回のモデルになるまでに2年かかっているそう。

立体表示ディスプレイの中身
一世代前のモデル

システムの構成図も展示用にまとめられていた。
ESP32がある理由がわからず教えてもらうと,一世代前のモデルの構成を再利用したためとのこと。しかし,ESP32でOLEDを描画すると上下運動に対してやはり速度が遅いようで,高速描画を行うためにFPGAを勉強してモータードライバからの立ち上がりをトリガーにして描画を行うよう改良したそう。確かにサンプルで描画していた富士山はあらゆる角度から見ても美しく3Dに見えていた。

立体表示ディスプレイの構成

制作者は普段は機械の仕事をされているとのことだが,これからは電気の分野もできないと仕事がなくなるという危機感を覚えており職場の元上司からも後押しされるカタチで取り組み始めたそう。どうせやるなら面白そうなことを,で目を付けたのが立体表示(ホログラム)。次世代モデルはカラー表現ができるようにするために,ディスプレイ部分をOLEDからTFTに変え,処理速度を上げるためにFPGAもグレードアップさせるとのこと。それに伴い,最近は高周波回路設計を勉強し始めているそう。

制作者の目的の達成に必要だから勉強するという意欲とそれがちゃんとアウトプットできていること,一つの目標に向かって走り続けられていることに尊敬の念を抱くと同時に,メイカーの熱量を分けてもらえた。
ソフトウエア業界でも同じく,ノーコード・ローコードでのソフトウェア開発が注目されている昨今,ソフトウェアだけで生き抜くことが厳しくなる局面が訪れる可能性はゼロではない。現在目の前にあるソフトウェアの世界にとどまることなく,一歩飛び出して新しい技術を楽しみながら吸収し,ちゃんとコミットしていける技術者でありたいと思う。

その他

同じ制作者のサブ展示。ホロレンズみたいなものが作れそうなアイディアが思いついたのでやってみたとのこと。光造形式3Dプリンターで作ったレンズ替わりの筐体に45度の角度で微細なミラーを手で並べて,筐体の透明度を出すために研磨して仕上げたとのこと。すごい・・・。実際にのぞき込むと側面から入れた像とレンズ越しの像が重なって,ホロレンズになっていた。こんなシンプルな原理で実現できることにも驚いた。

(本レポートについて)

このレポートは、展示会を視察したスタッフに課された「当日の展示などを見て回り、印象に残ったものや出来事について記事を書け」という課題の成果物です。 
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